五線親父の縁側日誌

永遠の70年代男・テリー横田の日誌です。

筆者は田舎の初老爺、下手の横好きアマチュア作曲屋、70年代洋楽ポップス愛好家、70年代少女漫画愛好家、
女子ヴァリボ&フィギュアスケートオタ、Negicco在宅応援組です。

吉田秀和氏逝去


クラシック音楽評論家の吉田秀和氏逝去

http://www.nikkansports.com/general/news/f-gn-tp0-20120527-957933.html


・・・みんなにはあまり興味ないかもしれないけど、私は結構寂しいです。98歳だから大往生なのだけど。この老先生は国営放送FM「名曲の楽しみ」と言う番組で、クラシック音楽のDJをなさってました。


お固い、アカデミックばりばりの、高踏的な「ひょーろん」と言えば、まさに典型かもしれない。一曲の音楽、一回のコンサートを評するにも、曲が書かれた当時の歴史や、影響を受けた文学や絵画、哲学まで引き合いに出して論ずる。そこまでしないと音楽の「魂」の部分、作曲家が何を言いたかったのか理解出来ないといわんばかりにです。その飛躍と偏見に、私は面くらい、正直ちょっと、閉口する部分も有りました。


それでも、この老先生の書く文章、ことに文体リズムに独特な所が有って、読んでいるうちに中毒的に引き込まれて行くんです。すごい学識と論理なんだけど、「音楽的な文章」でテンポ良く読めてしまう。思春期とか特に、変にこねくり回した文学に憧れたりする「イヤな高校生」だった私は(笑)当時新潮文庫で出ていた氏の著作を、ずいぶん読み、氏のアドヴァイス通りに、クラシックのレコードを買って行ったものでした。フルトヴェングラー指揮のベートーベンとか、アルゲリッチショパンのレコードとかですね。


自分はロックの人間ですけど、音楽全般にアプローチするときの態度や、音楽に何を込めるかの哲学とかでは、むしろこっちの吉田翁の方から、多く教えてもらった気もします。


そのなかでも特にボロボロになるまで読んだのが「名曲三〇〇選」と言う本。単に「どの曲が名曲で、こんな演奏家のレコードが良いよ」という、易しい推薦・解説本だと思って買ったら、甘かった。確かにレコード推薦もしていますが、その範囲が、完全に「音楽史」……グレゴリオ聖歌以前も、中世ヨーロッパも含めた、西洋音楽の歴史の中から、聴くべき曲を三〇〇曲選択していたのです。これは……範囲が膨大すぎる(++)


しかしこの本がまた、結局は繰り返し繰り返しひもとき、一番面白く役にも立ったのです。クラシック音楽の好きな方、自分で交響曲などのCDを聞くような方には、推薦しておきます。ただし現在の版には「推薦CD一覧」はついていないんですが(なんたること!)それでも、下手な西洋音楽史入門等を買うなら、こっちを買えと言いたいです。


吉田秀和「名曲三〇〇選」

http://www.amazon.co.jp/dp/4480425756/