五線親父の縁側日誌

永遠の70年代男・テリー横田の日誌です。

筆者は田舎の初老爺、下手の横好きアマチュア作曲屋、70年代洋楽ポップス愛好家、70年代少女漫画愛好家、
女子ヴァリボ&フィギュアスケートオタ、Negicco在宅応援組です。

ジーザス・クライスト・スーパースター


・・・なんだかんだ文句をいいながらも、地デジテレビ、BS、いろいろ見てます。(^^;


夕べは、伝説のロックミュージカル「ジーザス・クライスト・スーパースター」の映画版を放送していました。ユダの裏切りから最後の晩餐、そして磷刑にされるまでの「イエスキリスト最後の七日間」を描いたミュージカル。台詞がひとつもなくて全面歌だけなので、ミュージカルではなく「ロックオペラ」と言われていますね。劇団四季の舞台でも知られた作品ですね。そっちからのファンも多いと聞きます。ワタシは、名前と概略は知っていましたが、なぜか通して見るのは初めてでした。


物語はまず、おんぼろバスで砂漠に乗り付ける薄汚い若者たちの集団が、荒涼とした土地に舞台装置を運び込むシーンから始まります。時代劇のはずなのに、登場人物は皆ヒッピーファッションでバンダナにベルボトムパンツの出で立ちです。まんま73年当時若者の姿ですね。やがて集団の中から、1人の青年が文字通り「担ぎ上げ・祭り上げ」られる。彼がイエスというわけなのでしょう。


それと平行して、少し離れた小高い山頂で一人、黒人シンガーが「イエスと教団に対する批判」を、力強いビートで歌いだします。なるほど彼がユダか。しかし裏切り者ユダが黒人俳優ってのは、当時相当問題になったでしょうね。もともとキリストの生涯を、通俗的なロックにする事自体、保守的な教会などからは非難されたと聞きますし。


さて物語。イエスの教団は、どうやらエルサレムでの布教のために旅をしている最中のようです。迫害を受けることは必至で、付き従う信者たちも、戦いもやむなしといきり立つ者や、あるいは、イエスの名声を利用し、都会に行って一山当てようと考える者までいるようです。ユダは、こんな状態の教団で、無理な布教はやめて故郷に帰ろうと言いいます。ある意味彼の主張の方が正しいように思います。イエスが一番側に置く「マグダラのマリア」のことも、なぜかユダは気に入らず、そのことでイエスと衝突しています。


教団の中でイエスはカリスマどころか無力で非力です。神の啓示を受け、教えを説いてはまわったものの、本当の教えを理解し実践する者は数少ない。しかしここまで来てしまった以上後戻りは出来ない。救世主に選ばれた自分の運命に疑問を持ち、呪ったりさえしています。エルサレムに着いて、教団内で「怪しげなノミの市」を開いた信者のグループに激怒し、狂ったように暴れ回るイエス。そうかと思うと一人、山の中で自分に迫る死を予感し、嘆きの歌を歌ったりしています。周囲に翻弄され、情けないの一言です。しかしこれは、現代のロックスターの姿を表現し、さらに社会に翻弄される私たち一人一人の姿でもあります。


崩壊していくイエスと教団を見かねたユダは、歯止めをかける意図で、追っ手である司祭にイエスの居所を教えます。合図としてユダがキリストにキスするシーンは、なかなかに官能的です。ユダの心の奥底には、イエスを「独占したい」という思いがり、それがままならない嫉妬心も渦巻いていました。ユダはやがて自分の行動の愚かさに深く後悔し、悲しい道を選びます。


エスは捕らえられ、民衆の公前で、ローマの提督ピラトの裁きを受けます。この提督の描き方が良い意味でも悪い意味でも、人間的で素晴らしい。彼は、イエスの苦悩や潔癖を本能的に見抜き、そこにシンパシーや、屈折した愛情すら抱きます。「奇跡など起こせまい。お前はただの薄汚れたペテン師、死刑にする必要はない」と、ムチ打ちの刑を言い渡します。「イエスに死を!」という民衆の怒号の中、数をカウントされムチが打たれていきます。そのムチの音とイエスの苦悶の表情に、群集心理はますますエスカレートし、暴動さえ起きかねなくなる。いたたまれなくなったピラトは「そんなにこの男の死を望むなら、好きにするがいい!」と言い放つ。


そしてイエスは、磷刑にされます。


・・・・無責任な群集心理、責任者無き社会で、潔癖な理想や、純粋や愛を貫く難しさと悲劇。一時は担ぎ上げられたものの、非情の連鎖で破滅していく男の話と、私はこの物語を捉えました。また見れば考えも違ってくるかもしれません。


全編砂漠でのロケで画面が殺風景で、あまりお金がかかってない感じがして、映画としてはどうかなと思います。やっぱり舞台が本物なんでしょうかね。


肝心の音楽も、当時のソウル音楽のビートと黒人シンガーのがんばりが効いていますが、作曲のアンドリュー・ロイド・ウェバーにとってこの作品は処女作に近く、まだ魅力的な楽曲に乏しいのではないかと思います。後の「オペラ座の怪人」などのほうが、音楽の出来としては良いかもしれないと。(こちらも全編見た訳ではないですが……)

それでも、やはりこの作品は名作に恥じないと思います。もっと若い頃に見れば、感激してはまっていたかもしれません。次は舞台で見たいですね。


http://isabeau.fc2web.com/movie/review/jesus.htm

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http://www.h2.dion.ne.jp/~kisohiro/jesus.htm

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