五線親父の縁側日誌

永遠の70年代男・テリー横田の日誌です。

筆者は田舎の初老爺、下手の横好きアマチュア作曲屋、70年代洋楽ポップス愛好家、70年代少女漫画愛好家、
女子ヴァリボ&フィギュアスケートオタ、Negicco在宅応援組です。

アルフォンス・ミュシャの皮肉な人生

ミュシャを楽しむために

http://www.mucha.jp/


・・・アルフォンス・ミュシャ。19世紀末から20世紀初頭のパリで活躍した、チェコ人画家&グラフィックデザイナーです。日本でもとても人気が高くて、絵画に興味がない人でも何点か作品を見たことがあるかもしれません。花や草木の蔓などで華美に装飾された「アール・ヌーヴォー様式」を代表する作家として知られ、油絵作品よりもむしろ、美しい女性像を描いたポスターや広告作品の方が有名です。ひょっとしたら彼こそが、印刷媒体のデザイン「グラフィック・デザイナー」の元祖かもしれない。私も彼の作品が大好きで、展覧会にも行ったし、画集やポスターは毎日のように眺めています。


しかし、いろいろ調べていってわかったんですが、当人のミュシャは、グラフィックデザイナーよりも油絵画家として認めてほしかったようです。しかもドラクロワとかのように、壮大な歴史画とかを描きたかったらしい。ポスター描きは、イヤイヤではないけど、本心からではなく、結構生活のためやむにやまれずやっていたらしい。現代の今でも、広告屋よりは画家さんの方が偉そうですが(苦笑)


ただ名誉欲や野心のためというよりも、それ以上にチェコという国が、侵略されてきた歴史を鑑み、独立運動や民族自治運動に、いつか自分も絵で役立ちたいと考えていたのでしょう。実際後年彼は故国に戻り、「スラブ叙事詩」シリーズと呼ばれる、民族的な絵画大作群を何作も描いています。彼の夢は叶ったわけです。


ところが、その壮年の記念碑的絵画大作が、見ていてちっとも面白くない。(苦笑)若い頃、金のため時間に追われて描いたポスターや広告作品の方が、はるかに面白く写るのです。これはどういう訳かと思いますけど、何とも説明がつかない。あまりに思い入れがすぎ、肩に力が入りすぎると、失敗するといういい例なのでしょうか。皮肉なことです。


ともあれ、元祖グラフィックデザイナーのミュシャの広告作品は、そこに描かれた女性の清潔な美しさも含めて、素晴らしいものです。