花鳥風月・歌詞の復権
・・・某国営放送で「春うた2007」という歌番組をやっていた。コブクロ、レミオロメン、一青窈など、今のアーティストたちが、主に春をテーマにした持ち歌を歌うという、企画があるようでないような(笑)歌番組だ。
番組の演出とかには、ほとんど工夫はない。ただ彼らの歌を地味に流すだけといってもいいくらい。ところが、それが、良かった。感激した。
まずどのバンドも、歌詞が素晴らしい。とくに自然の情景描写がいい。こんな若いバンドの連中でも、季節のわびさびの中に人生を仮託したり、やることが見事に憎らしい。かつてネットを始めた頃私は、J-POPの歌詞に「花鳥風月」が消えたことを嘆いたものだった。今、それは完全に回復した。まさに「歌詞の復権」である。
~風のない線路道 五月の美空は青く寂しく
~動かないちぎれ雲 いつまでも浮かべてた
(コブクロ「つぼみ」)
~夕べの月の 一昨日の残りの 春の匂いで目が覚める
~寒さの残る 窓際のベッドの 胸の辺りがざわついた
(レミオロメン「茜」)
~くちなしの実 未だ君にできもしない約束ばかり
~百八つ結んだら 今年はせめて いじめないまま
~えこひいきした道を折れて 猫背がちに思い出ほどく
~指切りした日々添い星 今でもきっと僕の方が……
(一青窈「さよならありがと」)
・・・ねー、研究のため抜粋は許されると思うので、あえて抜き出してみたが、皆情景描写ばかり。強い直接的な感情表現は一切ありません。それでいて行間に漂う哀しさよ! こんな歌が、かつて表されたことが、あったろうか。
ひょっとしたら、今現在の日本のポップシーンは、かつて無い爛熟期を向かえているのかも知れない。
「日本のロックはダサイ!なんといっても洋楽だ!」といって青春を送ってきてしまった私は。彼らに羨望と嫉妬を禁じ得ない。