五線親父の縁側日誌

永遠の70年代男・テリー横田の日誌です。

筆者は田舎の初老爺、下手の横好きアマチュア作曲屋、70年代洋楽ポップス愛好家、70年代少女漫画愛好家、
女子ヴァリボ&フィギュアスケートオタ、Negicco在宅応援組です。

30年を2時間半で

・・・テレビで森山良子さんが歌っていた。まるまる1時間の番組。昔々の「この広い野原いっぱい」から「さとうきび畑」まで、代表曲歌いまくり。堪能させていただいた。

その中で、最近のアルバム収録曲だそうだが、素晴らしく面白い曲があった。

「30年を2時間半で」と言う曲。

演奏時間はなんと9分、そのほとんどが「語り」で占められた物語歌だ。50過ぎのオバサンがデパ地下で、昔の恋人に逢って……という設定。ユーモラス&ペーソスな詞を、森山さんが抜群の演技・マイムを交えて、ドラマのように進めていく。曲調は明るめのジャズワルツで、サビメロの部分だけ歌メロが付く。斬新な構成だ。歌唱力も演技力も恐ろしく高いモノが要求されるこのパフォーマンスは、経験を積んだベテランで、しかも軽妙なキャラじゃないと嫌味になる。まさに森山良子さんにしかできない真骨頂。世界広しといえども、このレヴェルの芸・パフォーマンスを観せられ、聴かせられる歌手は、そういないのではないかと思う。

ググってみたが、結構耳にした方も多いようで、話題になっているブログがあったりした。ミドルエイジ世代の新しいポップスの形として、これもアリかな。いろいろヒントも貰った気がした。

収録アルバムは(↓)

http://www.amazon.co.jp/gp/product/B0006B9ZAE/249-3876992-7251555?v=glance&n=561956&s=music

今回も「研究のため」歌詞を掲載します。作詞をやってらっしゃる方には是非是非ご参考に。

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■30年を2時間半で

作詞:麻田浩・森山良子/作曲:麻田浩・島健/歌:森山良子

こんな事ってあるのね。

新宿のデパ地下。

レジに並ぶ私の目が懐かしい横顔に釘付けになった。

他人のそら似? イエ、髪に白いものが・・・・彼だわ。ドキッ!!


早まる呼吸、声をかけようか、かけまいか? 

カゴに入ったお豆腐や泥つきゴボウの先が揺れている。

こんな事ってあるのね。若い日々の恋が甦る。

気づかないで私に………あ、やっぱり気づいて………。

マスカラが目の下に落ちてないかしら。

ヤダ、小鼻がテカッてないかしら。

彼がふと振り向いて瞳と瞳が重なって照れくさそうに微笑んだ。

いまだに恥ずかしがり屋なのね、あなた。


「元気?」

「うん、この通り。まあ何とか元気にしています。

 今夜のおかずを買ってるんだ。そこのオカラが美味しいんだ。」

「あ、私も時々買う。美味しいよね。」 

………あ、なれなれしいかしら。

「ねぇ、もし時間があればお茶でも飲もうか。」

無口で引っ込み思案だった少女は、長い年月をエンヤコラと乗り越える間に、

たくましく、ズーズーしく変貌しているものなの。

「うん、いいよ。」

相変わらずもったいぶっているのね。


近頃流行のカフェ。

あなたはコーヒー、私はキャラメルマキアート

そう、中年の女は新し物好きなの。

それから、2時間半。

私は3年前、多々の事情で一人になった。

あなたは2年前に伴侶を亡くした。そろそろ定年後の暮らしを考え始めている。

「そうか、定年か………お互い50半ば………もうすぐ四捨五入で60かぁ。」

たわいのない想い出話に話は尽きない、尽きたくない・・・・・!!


歌)

♪30年を2時間半で飛び越して 2人の気持ちは20(ハタチ)

初めてのデート「真夜中のカウボーイ」

30年を2時間半で飛び越して 2人の気持ちは21

ぎこちない First Kiss あなたの誕生日♪


「ご飯どうしてるの?」

「自分で作るんだ。これが結構たいへんでさ、こうやってお惣菜買うんだ。

 今、美味しい物なんでも揃ってるからね。」

「そうかぁ、大変ね。」

「ま、自由に色々出来るから考えようによっちゃ楽しいよ。」 

2杯目のキャラメルマキアートのストローが切なく空気を吸っている。

「ねぇ、一杯やろうか?」

「……そうだな。家でだれも待っている訳でもないし、

 ここだったら、あそこのホテルがいいかな?」

「ホ、ホテルゥ・・・・?!」

「うん、眺めもいいし、メシも結構美味いから。」

「じゃあ、オカラ、入れといてあげようか?」 

泥つきゴボウは2つにへし折って、バッグの底に押し込めた。


人波の中、あの頃みたいに並んで歩く。

夕暮れがそろそろ星のカーテンを降ろし始める。

愛嬌のいいウエイターが「奥様、ジャケットの方お掛けして宜しかったでしょうか?」

近頃、この何々の方、何々宜しかったでしょうか?という

訳の分からない日本語がスゴク気になるんだ私は。

奥様か・・・・うふ、奥様か。そうなってたかもしれなかった・・・・・。


♪30年を2時間半で飛び越して 2人の気持ちは20(ハタチ)

いつも歌ってくれた しゃがれた「Blowin' In the Wind」

30年を2時間半で飛び越して 2人の気持ちは21

別れた理由が いまだに見つからない♪


キャンドルライトが揺れる。私の心も揺れる。

ライティングはOKよ。目尻のシワが少しはごまかせるわ。

「とりあえず、ビール」と彼。私はドライな赤ワイン。

「最近食えなくなってさ」「あたしも」

「最近飲めなくなってさ」「あたしも」って言いながら、

やだ、私ったら、グビグビ、グビグビ4杯目!!


「女房がね・・・」「うん」「女房がさぁ・・・」

愛しているのね。女房を今も。

イヤダ、私ったら女房に嫉妬してる。

本当の愛がどんなものなのか、傷つけ合う事も愛し合う事も知らなかった

少女の恋が甦る。

あれから、30年。いろんな事があったわ、私にも。

お互いに乗り越えてきたのね、様々な時代を。


「あ、そろそろ行かなくちゃ。久しぶりに楽しかった!」「こちらこそ。」

「元気でね」「君も元気で。」

『きっとまた会えるね。』・・・・・・心の中でつぶやく。


♪30年を2時間半で飛び越して 2人の気持ちは20(ハタチ)

初めてのデート「真夜中のカウボーイ」

30年を2時間半で飛び越して 2人の気持ちは21

ぎこちない First Kiss  あなたの誕生日

いつも歌ってくれた しゃがれた「Blowin' In the Wind」

別れた理由が いまだに見つからない♪